昨日の国債の話の続きで、個人10年変動について書きます。
と、その前に、昨日の記事にコメント(「国債のデフォルトはあるか?」)を頂いたので、ご回答させていただきます。
国の借金は800兆円を超え、さらに返済の当てもなくなく増え続けています。少し前には国家破綻説なる物が囁かれ破綻回避本なる物もよく見かけました。そんな状況でも「本当に買っても大丈夫?」「本当にお勧め?」と心配なされている方も多いと思います。
しかし個人的な見解で申し訳ありませんが、そんなに心配する必要はないと思います。例えば今後借金が増え続け国家破綻に近づいたとします。その場合でも国ですから税金を上げるなどの対策を採ることができます。(本当に破綻しそうな場合、国民も納得しざるを得られない)。破綻する確率は、大地震で東京が壊滅するや、日本が戦争に巻き込まれる程度ではないでしょうか? そんな低確率の事象との引換えに日本債券に投資しないことを選ぶほうがよほどリスクがあると思います。
また、そもそも国家破綻時には、日本に住み日本円を使っている限り被害を避ける方法はないと思います(例え海外の銀行口座を持っていたとしても日本へ資産を持込む際に日本国に税を取られる可能性が高いと思います)。たぶん、日本株も他債券もキャッシュも全ての資産において国債と同じ程度のダメージを受けると思います。ネガティブな考えで選んだとしても、わざわざ国債だけを投資対象から外すのはもったいない気がします。
閑話休題
それでは、昨日の残りである「個人国債10年変動ってどうなの?」について考えます。
・前置き
個人向け国債(10年変動)の最大の特徴は、毎年金利が見直されるというところにあります。もちろん、わざわざ金利が下がるのがみえていて分っていて買う人はいないと思いますが、日本の場合は超低金利政策のおかげで、これからの金利は上がるしかありません。そういう観点では非常に有利な商品です。ただし、この有利さを出すために、同じ10年の一般国債の利率から、0.8%分だけ利率が下がってしまいます。よって、この0.8%のマイナス分が変動金利を得るためのコストと考えて十分かということを見る必要があります。
また、同様のコンセプトとして機関投資家向けには、変動利付国債(15年)というものがあります。こちらも金利が変動しますが、固定10年の国債との金利差は0.8%の固定ではなく、市場によって変化していきます。最近の金利差は、0.5%程度になっています。2,3年前は1.0%も開いていたため、個人向け国債の0.8%の方が断然有利(保有期間が10年と短いのに金利差は0.8%と抑えられていた)でしたが、最近は妥当な線になってきました。
・個人向け国債(変動10) VS 一般国債(10年) VS 一般国債or個人向け国債(5年)
実際にどれが有利な商品であるかを見極めるときは、ありそうな条件で収益をシミュレーションするのが分りやすいと思います。
ざっくり前回の発行条件で考えて見ます。
・10年国債利回りは、1.8%とします。
・よって、個人向け国債(変動10)は、-0.8%されるため 1.0%となります。
・5年国債は、前回の実績より、1.5%とし、10年国債との金利差を0.3%(個人向け変動との金利差0.5%)で見積もります。また、5年満期時に、新たな5年国債に乗り換える事とします。
上の条件で、1万円がどの程度増えるかを考えます(一般国債は5万円単位でしか変えませんが分りやすくするため)
・1)金利が上がらない場合
年数 |
個人(10変動) |
10年国債 |
5年国債 |
|||
金利 |
元本 |
金利 |
元本 |
金利 |
元本 |
|
1年後 |
1.0% |
10100 |
1.8% |
10180 |
1.5% |
10150 |
2 |
1.0% |
10201 |
1.8% |
10363 |
1.5% |
10302 |
3 |
1.0% |
10303 |
1.8% |
10550 |
1.5% |
10456 |
4 |
1.0% |
10406 |
1.8% |
10740 |
1.5% |
10613 |
5 |
1.0% |
10510 |
1.8% |
10933 |
1.5% |
10773 |
6 |
1.0% |
10615 |
1.8% |
11130 |
1.5% |
10934 |
7 |
1.0% |
10721 |
1.8% |
11330 |
1.5% |
11098 |
8 |
1.0% |
10829 |
1.8% |
11534 |
1.5% |
11265 |
9 |
1.0% |
10937 |
1.8% |
11742 |
1.5% |
11434 |
10 |
1.0% |
11046 |
1.8% |
11953 |
1.5% |
11605 |
あたりまえですが、利率順で、10年固定 > 5年固定 > 10年変動になります。
金利が思った以上に上がらない場合は、個人向け国債(10年変動)は、よくありません。
・2)金利が毎年0.25%づつ上がり、10年後には個人向け国債(10年変動)が3.25%になるとする場合
この時、10年国債の利率は、推定 4%程度になります。(10年変動+0.8%より)
年数 |
個人(10変動) |
10年国債 |
5年国債 |
|||
金利 |
元本 |
金利 |
元本 |
金利 |
元本 |
|
1年後 |
1.00% |
10100 |
1.8% |
10180 |
1.5% |
10150 |
2 |
1.25% |
10226 |
1.8% |
10363 |
1.5% |
10302 |
3 |
1.50% |
10380 |
1.8% |
10550 |
1.5% |
10456 |
4 |
1.75% |
10561 |
1.8% |
10740 |
1.5% |
10613 |
5 |
2.00% |
10773 |
1.8% |
10933 |
1.5% |
10773 |
6 |
2.25% |
11015 |
1.8% |
11130 |
2.75% |
11069 |
7 |
2.50% |
11290 |
1.8% |
11330 |
2.75% |
11373 |
8 |
2.75% |
11601 |
1.8% |
11534 |
2.75% |
11686 |
9 |
3.00% |
11949 |
1.8% |
11742 |
2.75% |
12008 |
10 |
3.25% |
12337 |
1.8% |
11953 |
2.75% |
12338 |
この場合で、やっと個人向け国債(変動10)の実力が出てきましたが、ただし5年国債の乗り換えでも同じ程度の収益を得ることができました。
ちなみに、長期金利が、4%になることが、この先ありえるかというと、なかなか現実味がありませんね(汗)
過去を振り返ってみると、ここ10年はずっと2%程度で、1995年まで遡ると確かに4%以上だった時期があります。
・3)金利が2)以上にあがる場合
表にはしませんが、個人向け国債(変動10年)に軍配が上がります。
・まとめ
金利上昇局面では、利率が半年後とに見直される個人向け国債(変動10年)が有利そうに見えますが、実は、金利がかなりのペースで上がらないと、実は有利になりません。
毎年0.25%づつ10年連続で利率が上がる程度の上昇率では、5年国債のほうが実は有利だということが分ります。
この記事に対するコメント
無題
先日の内容を取り上げていただいてありがとうございます。
心配する必要はあまりないということのようで非常に参考になりました。
今後ともよろしくお願いします。