日経225が下落に下落を重ねているようですね。
どうも短期的に見るとマーケットは非効率であるようです。(長期的に見ればたぶん効率的だとおもいますが、、)
私のような素人個人投資家は、「株式市場はランダムであり、そのリターンの分布は正規分布している」などの話を良く聞きしますし、実際にその理論に従って投資戦略を練っていると思います。
例えば、「リスクというのは、ばらつきで表すことができる。」「リターン5%、リスク5%なら、68%の確率で0~10%のリターンを得ることが出来る。」「最悪期を予想して標準偏差x2倍の下げを覚悟してポートフォリオを組み立てる。」などです。
もちろん、30年などの長期で見ると、株式のリターンは正規分布のようであり、標準偏差x2の下げは数%しか起こらないようですが、日々や月毎の価格の変動は、「ランダムウオークで正規分布に従う」というのは経験則的に正しくない気がします。
と前置きはここまで、
「moneychimp」というサイトをブラリブラリと立ち寄った時に興味深い記事がありました。
一番極端な例の引用ですが、
1987/10/19は、米国史上最悪の下げ相場だった日でしたが、そのときの下げ率は、、、
標準偏差の19倍の下げだったそうです。
3σで0.3%
6σで0.0000002% (1.97 E-07)
8σで1.3 E-13%
これ以上は、桁があふれて計算機で値が出てきませんでした。
もう、正規分布という話どころではなく、もはや宇宙規模の出来事だったみたいです(笑)
と極端な例は雑学として面白いのですが、もう少し詳しいデータも確認してみました。
以下、Total US Stock Marketの1964年から2005年まで(41年分)のデータで、一定期間のリスク、リターンなどを計算させた結果です。
まずは、日足データでの統計結果
41年の日々の値動きのでは、
1日ごとの値動きの平均 : リターン0.04%、リスク0.89%
そして、
5σ(起こるはずがない)の下げは0.1%、5σの上げは0.1%の確率で起きています。
3σ(0.3%の確率)の上げ下げは、1.2%も起きています。
月足データでの統計結果
1ヶ月毎の値動きの平均 : リターン0.93%、リスク4.42%
そして、
5σ(起こるはずがない)の下げは0.2%、5σの上げは0%の確率で起きています。
3σ(0.3%の確率)の上げ下げは、0.6%も起きています。
年足データでの統計結果
1年毎の値動きの平均 : リターン11.85%、リスク16.79%
そして、
3σ(0.35%)の上げ下げは、0%(なし)
2σ(5%)の上げ下げは、2.4%
このあたりまでのスパンになってようやく正規分布に従ってきました。
良く研究成果で、リスクは正規分布に従うという記述を見ますが、実データを見る限り、データとしては年単位ぐらいの大きさが必要のようです。 (そうすると観察期間は、、2,30年必要?)
ですので、日々や、月単位の管理を行うために、正規分布と仮定するのは少し危険がある気がします(あまり信用しすぎては駄目)。
逆に、「日々や月々のデータは誤差の範囲、1年でようやく1つのサンプルデータ」という境地に立てれば「リスクは正規分布に従う」とセンスでなく工学で資産運用が出来そうです。
長期投資は、スケールが違いすぎます(^^; 個人には厳しい道のりです。
■参考情報
moneychimp > Market Abnormality
(追記) こちらで続きを書きました
この記事に対するコメント
無題
統計を行うにはある程度のサンプル数(N数)は必要ですからねえ^^。
Re:無題
ybさんこんばんは。
>統計を行うにはある程度のサンプル数(N数)は必要ですからねえ^^。
年足のデータだと、41年分の41サンプルしかないので、これで本当に統計的に意味があるかということも考えないと駄目すね。
もっと長期間のデータ(サンプルを増やすと)を使うと、「年足データでも実は正規分布でない」という結果が出てきたりすると嫌ですね(^^;
正規分布に従うとは思えない派です
私も簡単に正規分布と仮定している意見にはかなり疑問を感じています。
詳しくは以下の自分のブログのエントリーでも書いていますが、投資家に正規分布で±2αで仮定させるのはリスクを過小評価させているように思えます。
都合のいいデータを引っ張って騙そうとしている人が言っているならマシなのですが、善意で言っている人がいるから困ったものです。
Re:正規分布に従うとは思えない派です
吊られた男さん、こんばんは。
エントリー記事も読ませていただきました。(宇宙的出来事という表現が被ってましたね(汗))
>都合のいいデータを引っ張って騙そうとしている人が言っているならマシなのですが、善意で言っている人がいるから困ったものです。
たしかに、資産が分散していれば特異値も出にくいのかも知れませんが、投資先が集中している方は注意が必要ですね。
無題
正規分布にならない“ファットテール”の存在を知り、
ひととおりファイナンス理論を否定し終わった後、
で、じゃあ個人投資家はどうすればいいのか?という当然の疑問に
うまく答えられないのがファイナンス否定派の苦しいところです。
Re:無題
>正規分布にならない“ファットテール”の存在を知り、
>ひととおりファイナンス理論を否定し終わった後、
>で、じゃあ個人投資家はどうすればいいのか?という当然の疑問に
>うまく答えられないのがファイナンス否定派の苦しいところです。
現象が分かったとしても、結局は、
・短期では歪んでいるから、アルファを追い求める人
・超長期だと、ほぼ統計通りなのでベータを追い求める人
と別れてしまうんですよね、きっと。
個人的には、“ファットテール”=ベキ分布ということらしいですので、どこかの偉い方が、ベキ分布の場合のリスクとリターンの求め方を開発してくれるのを願っておきます。
正規分布仮説否定派の見解?
水瀬さん、
私は正規分布仮説否定派(?)の代表ではありませんが・・・
まずは単純に学説としての正誤を問うているのだと思います。
仮に投資という現世の行為に落とし込むとすると:
「グロソブは世界各国の通貨に分散してソブリン債と呼ばれる高格付けの債券に投資しています。その上、金利が高いですから少し為替が円高になっても金利が補ってくれます。だから損する危険は低いですよー。」なんて主張と同じで、
「お客さん、投資のパフォーマンスは正規分布に従いましてですねー、だいたい±2αの範囲におさまるんですよ。これは○○理論というんです。だから損失は最大で-2αくらいまで見込んでおけば完璧ですよ。で、お客さんは、最大でどれくらいなら一時的な損失に耐えられますか?えっ、○○万円ですね。それだったらその金額を-2αとして考えると・・・」
なんて最大損失を過小に見積もらせて、顧客が覚悟しているよりハイリスクなモノに投資させかねないことが問題だと考えているのではないでしょうか?
少なくとも私はそう考えています。
私が「個人投資家はどうすればいいのか?」と聞かれれば、「正規分布仮説は通常範囲の概要を理解するには都合がいいツールです。しかし、現実にはファットテールが存在するので、正規分布の±2α(3α)を最大値とするようなリスクの過小評価をすべきではなく、ファットテールがあることを覚悟の上で投資すべき」と答えるかと思います。
無題
>吊られた男さん
2σ(3σ)を「過小評価」とすると、適正な評価は何σでしょうか?4σ?5σ?19σ?
それが分からなければ、投資家は自分の投資金額を合理的に決定することができません。
僕が思うに、2σ(3σ)を「過小評価」と表現するから、「じゃあ適正な評価は?」となってしまうわけで、2σ(3σ)は、使える「目安」だと表現すればいいだけではないでしょうか。
過少とか過大とかいう評価は、適正な評価が分かっていて初めて言えることですから。
将来の事は分からないが、損失の「目安」として2σ(3σ)を想定してみて、自分の損失許容度と照らし合わせて投資金額を決定するのが現実的かつ標準的アプローチだと思います。
(もちろん、ファットテールがあることの「覚悟」を教えることは大事だと思います)
無題
>モンチさん、
管理人様抜きで、いろいろ書いて申し訳ありません・・・
(たぶん)これでこのネタはラストにします。
>水瀬さん、
まさに最後の段落の対応が同じ考えます。
「だいたいが2α、3α程度だが、その外に飛び出る可能性も十分あるよ」という認識を持つべきで、「2α、3αの範囲内に収まる」と決め付けてしまうことが問題かなと思っているまでです。
細かいようですが、元本保証商品と元本がほぼ安全な商品が違うように、大まかな目安と断定には大きな隔たりがありますので・・・
熱い論争は大歓迎です
吊られた男さん、水瀬さん、こんにちは。
熱い論議は大歓迎です。
個人投資家(とたぶん機関投資家も?)は、ファットテールの存在を知っていたとしても、使い勝手が非常によい正規分布を使わざるを得ないんでしょうね。
その場合でも普通の個人投資家においては「リスクに対する覚悟の度合い」の問題だけなので、最悪のケースは「まぁ仕方がない」の範囲で済ますしかないんでしょうね。 (レバレッジをかけている人とかは、もっとシビアに計算しないと破産してしまいますので危険ですね)
逆に、デリバティブ商品の価格(オプションなど)なんかは、正規分布を前提にプライシングされてますが、金融機関はどう運用しているか知りたいです(^^;
サブプライム問題の時の金融機関の損失を見ると、実は、プロの方が見通しが甘いのかもと、ついつい思ってしまいます。
無題
>モンチさんへ
管理人さん抜きでの議論で申しわけありませんでした。
こちらもこれでこの話はラストにします。
>吊られた男さんへ
「2α、3αの範囲内に収まる」と決め付けてしまうこと自体が問題であるというご認識、同感です。
どうなるか分からないあやふやな将来に対する、確率・統計的な予測に過ぎない点を忘れないようにしたいと思います。