Date:2008/02/15 00:27
私が常々「この方は凄い!」と思っている方の一人が、大前 研一氏(経営コンサルタント)なのですが、その大前氏の新しいコラムが、Nikkei BPのサイトに上がっていました。
暴落の真相――サブプライムではなかった
-----引用開始-----
2008年1月、世界の株式市場が突然暴落した。日経平均も1万3000円を割り込み、米国ではFRB(米連邦準備理事会)が緊急利下げを実施した。
当節、こういうニュースを目にすると、すぐに「暴落の原因はサブプライムローン問題だ」と考える人も多いだろう。しかし、どうやらそうではないらしいということが分かってきた。本当の理由は、たった一人のトレーダーの不正取引だったようだ。
-----引用終わり------
という内容で、本当の犯人を、
「ソシエテ・ジェネラルのトレーダであるジェローム・ケルビエル氏の不正取引の結果」
としている。
ただ、この理論については、残念ながら疑問符がついてしまう。
なぜなら、
以下のグラフは、不正トレードが発覚したときのNYダウの株価の動きです。
赤い線が引いてある1/18が不正トレードが発覚した日です。
さすがに、このチャートを見て、18日の事件がきっかけで株価が落ちたとは言い難いですね。
(数日後底打ちしたのは、大前氏のコラムにも書かれているFRBの利下げが功を奏した感じですが。)
そもそも、不正トレードによる損失は、49億ユーロ(8000億円ぐらい)で、確かに額は大きいといえば大きいです。 しかしながら、株式市場の規模に比べれば影響が出る程のものでもないと思います。
(ユーロ圏での株式市場は、数百兆円ですので、1兆円未満の損失は、コンマ何%ですよね)
そして、もうひとつ、「サブプライム問題をどう解決すればよいか」という内容についても書かれています。
こちらは非常に分かり易く、非常に良いアイデアです。
-----引用開始-----
サブプライムローンがなぜこれほどまでに大きな被害を出したかと言えば、小口債券化されたからにほかならない。単なる住宅ローンとして扱われていれば、仮に全額焦げ付いたとしても、30兆円程度で済んだはずなのだ。それが小口債権化して、優良なローンまで混ぜてさらに金利部分などを仕組み債として世界中で売りまくった
(略)
サブプライムローンを解決するには、当時のスウェーデン政府と同じような対策が必要だろう。政府、あるいは複数の政府が、危なくなった金融機関を預かる。そして、小口債券化した債権、債務を解体して、純粋に返却不能になったサブプライムローンはどこにあるのかを調べて、取り出していく。
-----引用終わり-----
簡単にまとめると、
焦げ付きがどこにあるか分からない債権を分解し、駄目な部分と良い部分をきっちり分離する。
今、株価暴落・金融危機は、疑心暗鬼からくる信用不安の部分が大きいと思います。
大前氏が言われるように、膿み出しを上手くできないものでしょうか???
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この記事に対するコメント
無題
おそらく、1/18の発覚が暴落の原因ではないですね。
まず世界的な株安が1/18以前から起きているのは上記のグラフから明らかです。
先のトレーダーはポジションの報告義務を逃れる工作をしていたようですが報告義務は逃れても上記下落で損失は拡大していき1/18の時点で損失がロスカット警報を出すポイントまで拡大し発覚ですね。彼は4700万円のトレード成功報酬を狙って失敗したようです。
尚、損失は後日減額修正されて7400億円程度らしいですがこれは株式市場にインパクトを与えると思います。何故なら比較すべきは市場規模ではなく出来高です。そして彼はおそらく全ての銘柄を等しくポジションしていないでしょうからそのアンバランスは急落を招きます。全てをフランス市場に投資しているとも思えませんがSGが株式を売却した日にフランスは暴落しています。
それがダイレクトにダウに波及しなかったがその内波及するだろうという形で利下げの判断に影響を与えた可能性はあるかもしれませんね!
Re:無題
masaruさん、こんばんわ、
>尚、損失は後日減額修正されて7400億円程度らしいですがこれは株式市場にインパクトを与えると思います。何故なら比較すべきは市場規模ではなく出来高です。そして彼はおそらく全ての銘柄を等しくポジションしていないでしょうからそのアンバランスは急落を招きます。全てをフランス市場に投資しているとも思えませんがSGが株式を売却した日にフランスは暴落しています。
出来高という話で言うと、損失は50億ユーロのようでしたが、ポジションとしては500億ユーロ(8兆円)も積み上がっていたようです。もし、一日で全ポジションを整理しているのであれば、さすがに混乱は大きかったかもしれませんね。
ポジションの大きさに驚きです。先物のようにレバレッジの効く商品は怖いですね(^^;
大前氏の提案について
モンチさん、意識していなかったのですが二度書きしたようです。もうしわけありません。
ほぼ全てを21日に整理したそうですがアメリカへの連絡は事後だったらしいです。(欧州らしくないですね。)
おそらく成功報酬欲しさに張ったポジションに負け取り返すために倍倍ゲームで負け続けたんですね。
500億円くらいでやばいと思ったけど怒られるから相場で取り返そうと思ったのではないでしょうか?
でも休日をはさんで18日の次は21日ですからモンチさんのおっしゃるとおり米国の影響には関与していませんね。21日はアメリカには連絡前ですねので相場に反応しただけです。
7400億円は大きいですが逆に考えると1日で処置が完了したわけですからニュースになったら織り込み完了ですかね。
でもSGでも負ける時は底値売りになっちゃうんですね。個人投資家なら尚の事です。
大前氏の提案はバフェット氏より踏み込んでいますね。
バフェット氏は分解まではしないけど地方債など本来価値は落ちてないのに保有者の信用の問題で価値が下がったものを買うわけですからバフェットサイドに移れば彼の投資哲学からして投売りで市場が混乱することがなくなるので個人も地方債を買える。結局、悪化していない地方債だけを売却するのって破綻後のライブドアの傘下会社切り売りを思い出します。
尚、売却側にもメリットはあります。どこまでバフェット氏がディスカウントを要求するかわかりませんが下落の危険のないキャッシュで余裕が生まれると格下げまでの余裕も多少できるでしょうから。まあ拒否する会社が出る程度までディスカウントを要求したと言うのは確かでしょうね。
大前氏はパッケージ証券の中身にまで「腐ったみかんの方程式」を適用する訳ですから効果はより大きいですね。
Re:大前氏の提案について
masaruさん、こんにちは
(重複メッセージは削除しました)
>でも休日をはさんで18日の次は21日ですからモンチさんのおっしゃるとおり米国の影響には関与していませんね。21日はアメリカには連絡前ですねので相場に反応しただけです。
>7400億円は大きいですが逆に考えると1日で処置が完了したわけですからニュースになったら織り込み完了ですかね。
休日を挟んで事後連絡というのは、タイミングを狙っていた気がしますね。
今思えば結構な大きなニュースでしたが、振り返ってチャートを見ると上手く織り込めたんでしょうか?
>大前氏はパッケージ証券の中身にまで「腐ったみかんの方程式」を適用する訳ですから効果はより大きいですね。
そうですね、少なくとも損失がどれだけあるのかを正しく確定して欲しいですね。
損失額が大きいと市場も荒れるかもしれませんが、それで底打ちすると思われますので。